喜 瑞 KIZUI 三方楽家の伝承さんぽうがっけのでんしょう
東儀兼彦 とうぎかねひこ

コーディネート:岡野玲子演奏:東儀兼彦 芝 祐靖 豊 英秋 2002年12月21日発売開始 財団法人ビクター伝統文化振興財団◎ 定価:5,000円(税抜)VZCG-8210〜1 2CD二枚組音楽CD


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 「喜瑞」きずい 「朱鳥」しゅちょう 富士山の麓、身延市での録音に立ち会う間、二つの言葉がずっと頭の中に浮かんでいた。

 我国古来の音楽、神楽かぐら、東遊びあずまあそび、海を渡って来た種々の渡来とらいの音楽たち、これらが まだ整理されていない、絹の道を渡ってきた様々な楽器や人々でひしめいていた時代の香りを喜瑞 朱鳥という二つの言葉は感じさせる。

 音楽というものは誠に不思議なもので、その道の達人の手に奏されると隠れていた姿を顕わして見せてくれる。音の響きの中に宇宙の叡智を秘めているばかりか、音楽が誕生した時代の香り、音楽が所属する世界の映像、見渡す限り一面に輝き咲き渡る蓮華れんげや、その上を飛び交う極色彩の極楽鳥ごくらくちょう、そんなヴィジョンまで見せてくれる。

 それらの音楽は今に至るまで千四百年間、連綿と楽家によって伝え続けられてきた。

 雅楽が盛んだった平安時代には、雅楽を専業とする家は京都方、奈良方(南都方)天王寺方(大阪方)の三方にあってそれぞれ盛んで三方楽人さんぽうがくじんと呼ばれていた。応仁の乱後の世の乱で衰退しかかった都の楽を奈良、大阪の伶人が補ったこともあり、雅楽は何度も危機を乗り越えている。

 今回奇しくも、その三方の楽家を今に引き継ぐ三家、芝 祐靖しばすけやす氏、東儀兼彦とうぎかねひこ氏、豊 英秋ぶんのひであき氏の三人の演奏家に演奏していただけたのはまさに奇跡。笛ふえ・篳篥ひちりき・笙しょうの三管の粋、そればかりか琵琶びわ・箏こと・和琴わごん・歌うた・唱歌しょうかでの合奏など雅楽ファン垂涎の曲が含まれ、充分に堪能していただければこんなに嬉しいことはない。

 一曲一曲に多大な情報を宿した大切な宝物のような古典音楽、雅楽、CDの中に取り上げきれない名曲、大曲、まだまだ多々あるが、エッセンスを搾ってめでたい瑞に包み込んでお贈りしたい。

 

二〇〇二年十月八日 寒露

岡野玲子

(岡野玲子・作品封入のライナーノーツより)