陰陽師巻九の出版,music for 陰陽師のリリース,サイン会…。
2000年前半のできごとのインタビューです。(2000年6月12日掲載)

   
     
     
     
OKANOインタビュー(2000年04月採録)
■まず,今年の3月17日新宿で行われたサイン会のついてのお話ですが,大層面 白い趣向だったそうですね。  
 


面白かったですよ。今回のサイン会はサザンシアターという劇場の,それも金屏風(!)が置かれたステージに,皆さんがあがってきてサインをしたんです。もちろんその方式は楽屋を出る直前まで聞いていなかったんですよ。仰天する間もなく舞台の上にいましたね。(笑)

皆さん客席に座って,我々の座るステージに一列づつあがってゆく。 最初「え〜季節がら卒業証書渡すようなもんかね〜」って冗談を言ってたんですけれども,こちらはステージでずーっと客席から見られている訳です。そこで,どんな風に待ってるのだろうと見ると,皆さんのほうがこちらよりずーっと緊張している様子なのね。(笑)

おまけにステージにのぼってから,「それじゃヒトコトご挨拶を」と言われちゃって「は?そんな話聞いてないよ〜」私ってホントテンション低いから,しゃべればしゃべるほど,どんどん会場が沈んでゆく。(爆笑)みんながどんどん緊張してゆくだけって感じなんです。

そしたら主催者の方が,「それでは一列目のひとからどうぞ」と言うので,思わず「ご焼香ですか?」(笑)で,もうし〜んとしている所に列がやってきて,これまるでご焼香じゃない,緊張しすぎでしょ,何か音楽欲しいじゃない,とか言ってたら,BGMがそのうちかかってきた,するとまあ,その雰囲気はますます告別 式!(爆笑) 独りで壇上で笑ってたんだけど,や〜参りましたね〜。私は結構愉しませていただきました。

■(笑)そうこうしてサイン会はスタートしました。  
 


いつもサイン会の度に本のテーマにあわせてサインを変えてしまうんです。今回何にしようかな〜と思ったとき,辰年でもあったので龍でいこう,と。
一番の整理券を取った方が朝の7時くらいからお店の前に並んでいらしたという話を聞いたので,これはタダのサインじゃつまらんな,と。最初の方は変若水(おちみず)汲み,というわけで一番目の人は『変若水』とサインと『龍』でした。

そのあとから14人目毎に『朔』と『望』です。まず『朔』(新月)から始まって14番目に『望』(満月),合計で十人くらい。そのほかの方は『龍』ですね。でも,列が整理券の順番だと思ったんですが,実は会場に着いた順番だったそうで,整理券一番の方,残念でしたネ。

サインをしている間,皆さんがとても真面目で。このサイン会の間ずうっと頭に浮かんだ感想というのが,その場の全部の状態が『厳』(いづ)という言葉なんですよ。サインをもらう人の気持ちの状態も『厳』になってるのか,それが凄く気持ちが良くって。
その後,『厳』という言葉がそのままひっかかって…。『厳』とは何だろう,なぜ今『厳』なのだろうとずっと心にあったんですが,後日発作的に広島の尾道で開催された『龍の展覧会』に行ったら,あったんですよ『厳』が。出口王仁三郎が書いた絵なんですが,二匹の龍がからみあっている。そのうち陽の龍が『厳』(いづ)陰の龍が『端』(みづ)とあって,ああ,なるほど…と。(笑)

そして,ますます『厳』という言葉について考えてしまうのですが,日本の本当の何ていうかな,神に対する根底の精神は『厳』じゃないかなと思います。それをサインを受けに来た皆さんは感じていたんじゃないかな。ですから綺麗でしたよ,サイン会の状態っていうのは…。 凍った洞穴みたいな感じ。でも氷なんかじゃなくって,岩が凍ったような洞穴の中にいるみたいでしたね。お互いに凄くいい時間が取れたんじゃないかなと思います。

 

■このサインを書かれた『陰陽師』九巻は,連載中に掲載紙のスコラが解散し,その後現在の白泉社メロディ誌に移籍した後はじめて出た新刊でしたね。一巻から八巻の旧刊も,白泉社から次々と復刊されました。  
 


長い間お待たせしましたけれど,もう皆さんの手に届いているのかしら。

旧刊の復刊もあって,トーンのミスを修正したり,コマを変えたり,七巻には二ページが追加され,全部原稿を再び製版することからやりました。スコラの頃からやっていただいている印刷会社さんなんで陰陽師の製版に関してのノウハウがあるのですが,今回の新刊・九巻では,一ページの製版に六時間もかけた所があるという凄いお話があります。
まあ,原稿そのものも,気の遠くなる様な手間がかかていますので,さもありなん,なのですが。

 

■確かに『陰陽師』のように線が微妙なうえトーンも軒並み重ね貼りで微妙なニュアンスを表現している画面 では,製版にはもの凄い神経と技術が必要で担当者も大変だとは思っていましたが…しかし六時間もですか。  
 


CDの制作の時もそうでしたが,『陰陽師』はどうしても関わる人全員に『究極の技術』を要求してしまう作品になってしまうみたいですね。(笑)

 

 
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