音を造ってゆく作業,その環境を造ってゆく作業というのが,漫画を造ってゆく作業と大変似ていると思いました。例えば『飛鳥井』という曲では,石川高さんの声に,スタジオのスタッフは「何でもできる」と言うんですよ。「要望を言ってくれたら,どういう状況も作りますよ」って。で,私が出した状況っていうのが 「谷底で彼は歌っている。そばに水が流れている。で,聴く人は,彼よりも,2m高い岩の上に座っていて,目の前には,100mくらいの崖がある。その山に反響するような声だけど,そばで聴こえてなくて下から聞こえるようにして」と言ったんですよ。(笑)
そうしたら,「……うーん,ちょっと待ってください」て言って,録音した声にリバーブをかけて,そこのエコーの部分,響いた部分の声だけを取り出して元の声に足したんですね。まるでトーンを貼るようなものなんですよ。その作業を見ていて「あらやだ私がよくやる手だわ」って。
陰陽師の原稿では,龍など,本当の姿っていうのが大きくなったり小さくなったりするような状態,いつもこうぶわぶわと動いていて定まっていない状態を出すために,元の龍の絵を描いて,それに網(スクリーントーン)を貼りつけて,更にそれを遠くに表現するために,何度もコピーをくりかえし重ねていって,倍率を変えてコピーしたものを,いくつも貼り替え貼り合わせてゆくわけですよ。
それで「あらこれは同じ事をやっている」って。これってそういうことでしょう,と言うと,スタジオのスタッフが「ああ,俺達の手は全て見られたな〜」「…何も隠せない」とか言って(爆笑)だって漫画でやっているのと同じだもん。(笑)
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