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■夜通し延々続く作業の中,ほんとうにスタジオのスタッフの皆さんがもの凄い集中力で応じてくださっていました。スタッフだけでなく,岡野さんも締切の合間の体を酷使してのスタジオ作業でした。 |
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まず企画を作った段階で,全部の曲は入らないから,途中でフェイドインフェイドアウトをしなきゃいけない,もしくは曲を重ねなきゃいけないとことがおきてくることは想像できます。さらに,音のバランスは(伶楽舎の音楽監督の)芝先生がやってくださるけれど,音質や音の置かれた状況を決めなきゃいけない…。で,一体それを誰がやるの!というのがギモンだったんですよ。私はほんっとに漫画の作業が忙しいからCDを作ってたら,漫画描けない。どうする,どっちかしか選べない。
そうしたらスコラがなくなった。(笑)陰陽師が休載の間もかなり忙しかったんだけれど,自分が手に入れられる限りの雅楽を聴いて,それでほんとうにようやく選曲ができた。これでかなり形が出来てたんですけども「…トラックダウンの作業の時どうするの?」と思っているうちに,色々あって結局ほとんど予習なしに私がやんなきゃいけなくなった。(笑)
さあ,私がその場でなるべく最短時間で,様々なことを決めなきゃいけない。仕方がないので「一寸曲を聞かせてください」って言って,私は音を聴きながら「ここは使えるここは使える,ここで切る」と決めていく。
「宮丸さん悪いけど太鼓の場所教えてくれ,太鼓だったら指示ができるから」と,本当に解らなくなると参加してくださってる伶楽舎の宮丸さんに尋ねて,その場で決めていってます。一番その場にふさわしい正しい姿を即決してゆく一瞬芸の連続ですよ。漫画の連載も毎月締切があるので,綿密な構成があるように見えて実は一瞬芸の連続なんだけど,またここでもか,でしたよ(笑)。
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■私も取材に伺いましたが,何かほんとうに迫力ある現場でした(笑) ところで私もこんなにみっちり雅楽と出逢ったのはこの取材からなのですが,とくに雅楽の曲って,鑑賞しているだけだったらなかなかわからないけれど,弾きだしたり吹きだしたりするとあっという間にわかる事が,何かもう『極端にありそう』な気がするんですけれども。 |
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そうですね。実際に弾いてみるともの凄くわかると思いますよ。
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■思いあぐねてこの間収録曲の二星を歌ってみたんですよ。そうしたら何か伸ばして歌っているだけなんだけど,声がぐるん,ぐるんと回るんですね。
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神事の御神楽がみんなそうなんですよ。更にそれを基本にして雅楽のシステムは作られてある。中国とは違う作りになっています。
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■ですので実は岡野さんの描いている事っていわゆる怨霊退治とかカルトみたいに言われていることが多いんですが,
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なのでいい加減にその形容をやめてほしいですね。(爆笑)
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■ふと気が付くと凄いベーシックな事について,ベーシックな事を拾い集めて描いている気が最近するんですよ。
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あるレベルまでのベーシックなことを描ききったので,九巻で晴明は不言実行にうつるんですね。そして,様々な立場の様々な自己との戦いがあるわけです。読む人によって誰に自己を投影するかは,各々,その時々で違ってくると思いますが。
CDアルバムのほうも,捉える人によって自由に捉えられるように,とっても深く広く作っておきました。掘り下げられるところは自分で掘り下げて,どんどん拡げて欲しい,と思いますね。 そもそも雅楽の演奏は,神事の時は野外で奏されるけれども,現代ちゃんと聴こうとするとどうしてもコンサートホールで聴くことになってしまいますよね。でも,演奏された当時は,野外が正式で,その時の天候や土地が,音楽と結びついてその時の場が出来るから,なるべく野外に近い状態でアルバムを作りました。
さらに雅楽の持つ力強さを聴いて欲しい。もともと鑑賞するものではなく,色々な場に響かせて場をたちあげる雅楽,その実現型というものを,これから連載中の十巻で描いて行きます。 既に,表紙には何を描くか決めてあります。七巻を描いたときから,これは,まずは雨乞いして浄化してもらわなくちゃいけないし,九巻でまあ炎上してもらわなくちゃ困る。 で,そのあと十巻の表紙はあれだ,と決めてあります。
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■現在連載中の十巻の行方がますます楽しみです。本日は長時間に渡る濃厚なインタビュー,お疲れさまでした。
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2000年4月某日,雷雨の間に採録
OKANO追記:四月末のインタビューの掲載が遅れに遅れたのは岡野が多忙すぎて原稿の校正が遅れたためです。ゴメンナサイ。
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