対談:橋本一子×岡野玲子


Phantasmagoria◎ OKANO

いや,もうあっち(『陰陽師』)に全部出てます。私の場合ね,体力がもう限界だったから,これで助かった。これがなかったらあれ,描けなかったと思う。
九曲目の『ファンタスマゴリア』も戦闘態勢にぴったり。

※『雲珠』
アルバム◎『music for 陰陽師』CD1の最後の曲。橋本一子さんが作曲・演奏したピアノ曲。

 

Sacrifice◎

----このようなお話を聞くと,お二人が別の場所とジャンルで産み出されている作品が,不思議なところで響きあっているという感じを受けます。更にこのアルバムのプレリュードとして,あの『雲珠』※を聞くと,ああ,なるほどな,と思うことがあります。
ICHIKO

ああ〜。

OKANO

ああ〜。

ICHIKO

あるかも。だからやっぱり繋がっているよね。あそこから。

四曲目の曲『サクリファイス』ってあるでしょ。 私は一番はじめに陰陽師のCDを創るっていう話を聞いたとき,あの曲のような世界と,雅楽っていうのが同時にあるっていう世界が,私の中でぱっと聞こえてきたんですよ。だから,その両方の世界が行ったり来たりするっていうような,そういうようなものになるのかなと思っていた。で,アルバムはあのように雅楽とイーノさんの二枚組という形になって,そこで次があるならば,既にもうあるものをリミックスしたいなっていう気持ちが今ありますね。

もう一度新しく雅楽のほうの曲を選んでいく段階からやるよりも,既にできあがったものと,行ったり来たりするっていうやりかたは,結構,面白いかもしれない。ある意味で楽な作り方ができるし,結構やってみたいっておもってる。

OKANO

聴いてみたいよね。

ICHIKO

なぜかというと,やっぱり雅楽の世界って凄く強力な…強烈な世界だし,ひとつ出来上がっている世界じゃないですか。で,それを壊すわけじゃないんだけど,その存在をそのまま,現実と非現実の中に,…何ていうのかな,過去だったり,ほんとにあれが200年前だったり,例えば200年後だったりっていう「時空のやりとり」がしてみたいなっていう感じがしますね。

Out Of Limit◎ OKANO

でも,一子さんは今回のアルバムでそれをやってる。この一曲目(『アウト・オブ・リミット』)がそうじゃない。宇宙空間と海底の,クロッシングをしてるじゃない。5000年くらいのクロッシング。

ICHIKO

ああ,そうか…そうだね,そうだね。

----交差や繋がり,共鳴,と凄くコアな話題が展開されてドキドキします。そこで今まで橋本一子さんが創られてきたアルバムの流れとこの作品との関連をここでお聞きしておきたいのですが。

※手塚さん
映画監督・手塚眞氏。監督作品の劇場映画『白痴』では音楽を橋本一子さんが担当。サウンドトラックやビデオが発売中。

ICHIKO

私がこういうアルバムを創りたいという構想を持ってるということを,二年ぐらい前に手塚さん※と話をしてたんですよ。次の別世界に行くために,ひとつ,これをやんないといけないんだけどな〜っていうように。
そうしたら今回,「一子さんの好きにやってね」って岡野さんからお話があって。やった〜,好きなようにやっていいんだ〜!絶対これをやろう,と思った訳です。でもそれをやりだすと,それはもう今までにない凄まじい苦しい戦いになったけど。

OKANO

今までもライブではこのような作品が時々出てたんですけどね。

ICHIKO

どのアルバムにも,今までね,過去に20代の頃とか出してきたのに,必ず一曲は入れてますね。

OKANO

私はその一曲が好きだったんだよね。

ICHIKO

そう,岡野さんは大体その一曲が一番好きだというんですよ。 私もそうなんだけども,やっぱりまだ,まずビジネスとしてのアルバム作りの枠がある。それで私もいろんな事をやりたかったから,自分の芽を全部みてみないと気が済まない,現実化してみないと気が済まないっていうタイプだったので,とにかくそれを全部やりました。

結果,今までに創ったアルバム,もちろんそれは,それぞれ一枚一枚違うんだけれども,そこに必ず今回のアルバムでやったことがいつもある。そうしているうちに大体全部その当座やりたかったアプローチはやり尽くしちゃって,すると残ってるのは,結局ここだったんだって思った。
じゃあ,これからはこれだけで行くしかないかも…ていう感じをうけますね。

OKANO

こないだジャズのアルバム(『miles away』)出して,ファンがついたばっかりなのにね(笑)。

ICHIKO

あれはもう一枚やります。それはそれで自分では楽しいっていう。
『miles away』のときは結構色んなやりかたをやって,すっごい集中させた。
で,次のジャズのアルバムは逆にもっと,開かれた感じになるんじゃないかなって。もっと楽しんじゃうっていうかね。

OKANO

やっぱり肘で弾くのね(笑)。

アルバム◎
『ファンタスマゴリア』
ICHIKO

肘はこっち(アルバム『ファンタスマゴリア』)でやりました(笑)。


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